同じ譜面を読み、同じテンポで演奏しているのに、ある演奏は生き生きとして、別の演奏は平板に聞こえる。拍に合っているのに、なぜかノれない。クリックと一致しているのに、音楽にならない。
音楽力学は、音が音楽的出来事として成立し、結合し、共有される構造を扱う理論である。音が音楽になるには、一人の人間と音響世界との接触において、差・意味・時間・方向・出来事が、その人にとって成立する必要がある。この意味で、音楽力学は「音の理論」ではなく、「音が音楽的出来事になる関係構造の理論」である。
リズムとは速さでも記号でもなく、時間の感じ方である。その感じ方がいかに生まれ、いかに共有され、いかに深くなるのか。本ページでは、その理論的骨格を概述する。